-- SHIMAの2ndアルバム『BLAST』完成記念ということで、今回は前作「すすれ-Re麺bar-」に引き続きプロデューサーを務めたHEY-SMITHの猪狩君を迎えて、対談形式で今作の魅力を掘り下げていければと思います。

猪狩秀平(以下 猪狩) 照れますね(笑)。

EGACCHO いままでプロデューサーとして対談したことある?

猪狩 ないっすよ。響きだけ聞くと、めちゃイキってますね。

HIKIDA はははは。猪狩P!

-- もともと猪狩君がSHIMAに対して、「誰かを入れて音源を作らないですか?」と過去に聞いたことがあるそうですね。

猪狩 ああ、それは覚えてます。いつ頃かは覚えてないんですけど。

EGACCHO がりちゃん(猪狩)は昔から「自分、曲のアレンジとか得意なので、何かあったらやらせてくださいよ」と言ってくれてましたからね。

猪狩 自分も誰かにプロデュースされてやってみたい気持ちもあったから、そういう風に言ったのかなと。

-- 自分自身も誰かをプロデュースしたい気持ちがあった?

猪狩 ありました。SHIMAとは付き合いもめっちゃ古いし、音楽の趣味もそうだけど、人間や食の趣味も合うんですよね。居酒屋に行って、30種類メニューがある中から5つ選べと言われたら、4、5つ被りますからね。

全員 ははははは。

-- 音楽だけに限らず、趣味嗜好も合うと。

猪狩 ということは、音楽でも自分の色を入れても気に入ってくれるやろうと。曲を聴いて、勝手な意見で申し訳ないけど、ここをもうちょっとこうすればいいのに!と思うこともあったから。自分が入ることで、いい感じになればいいなと。

-- 猪狩君から提案されたときにSHIMA側はどんな反応を?

EGACCHO 「何かあったらやらせてくださいよ」と言われていたけど、こちらからは特にアクション起こさなかったですね。自分たちでやることしか頭になかったですからね。

HIKIDA 当時はプロデューサーを入れてやる考えがなかったんですよね。それで前作(「すすれ-Re麺bar-」)で誰かを入れてみない?という話になり、いろんな候補が出てきたけど、やっぱり猪狩がいいなと。

-- バンド的にプロデューサーを入れようと心変わりした理由は?

HIKIDA もっとバンドを良くしたいという気持ちはありましたからね。ひとつの方法としてありだなと。

EGACCHO 僕はシンプルに面白そうだなと思いました。

明生 猪狩だったら、やりたいよねえという話になったんですよ。

HIKIDA うん、猪狩はずっと言ってくれてましたからね。

猪狩 それは嬉しいですね。

HIKIDA ぶっちゃけ、不安はあったんですよ。どこまでプロデュースされるのかなって。リフはこっちにしろ、メロディはこっちにしろ、とか言われるのかなって。

猪狩 ふふふ。プロデューサーの嫌なイメージね。

HIKIDA でもちゃんと尊重してくれるし、猪狩はSHIMAのことをちゃんとわかってくれてるから。

EGACCHO でもビビってたよな?

HIKIDA 超ビビってた(笑)。

EGACCHO がりちゃんの家にどんな作品を作るのかを話に行ったときもビビってたからね。

HIKIDA 道中ずっと猪狩くんと何を話そうかなって。

猪狩 いやいやいや。俺、後輩やから。

HIKIDA はははははは。

EGACCHO がりちゃんにプロデューサーとして入ってもらうってなった時に、ひっきーさん(HIKIDA)のメンタルが終わるんじゃないかという懸念はありました(笑)。でもいけたね。(笑)

猪狩 ひっきーさんは強かったですね。合宿に入ったんですけど、2、3曲聴かせてもらって、「イマイチなんで、もう2、3曲作ってもらえます?」と普通に言ったら、「エーッ!」と叫んでましたけど、翌日もずっとギターを弾いてて、「ちょっとできたんだけど」って。曲の最初からサビぐらいまでもう2、3曲作ってて、天才やん!と思いましたからね。

HIKIDA うん、今回はずっといけてた。それも猪狩のおかげだと思う。レコーディングしている裏でも曲を作っていたし。

-- ひっきーさんは猪狩君に焚きつけられた感じですか?

HIKIDA うまくモードに入ったし・・・猪狩に聴かせたいモードになっちゃって。

猪狩 ははははは。

HIKIDA 毎日、曲ができたよって聴かせたくなっちゃって。

猪狩 恋人みたいになってますやん(笑)。

HIKIDA それに対してちゃんとリアクションをくれたし、地獄だったけど、ほんとに楽しかったですね。

-- 猪狩君はプロデューサーとして、どんな形で関わろうと思ってました?

猪狩 0から1にするのはSHIMAで、そこからそぎ落としたり、変化させたりという感じですかね。「こういう風にやって!」と言われて作った作品だと、SHIMA自身が聴いてもテンションが上がらないと思うんですよ。だから、そこは気を付けましたね。

HIKIDA めっちゃ猪狩エッセンスが入るかと思ったけど、SHIMAというバンドを考えてくれた上でアプローチしてくれましたからね。コード進行も難解にするんじゃなく、「SHIMAってもっとシンプルじゃないですか?」、「SHIMAだったら普通こう行きますよね」って。バンドに寄り添った意見を言ってくれましたからね。

猪狩 音源やライヴも観ているから、こういう展開好きなんちゃうん、このコード弾きそうって分かるんですよね。

-- SHIMAは無意識だったり、手癖でやってるところも、猪狩君から見ると、この個性を、いかに伸ばすべきか、そういう視点になる?

猪狩 うん、そこが重要なんですよね。

EGACCHO SHIMAらしさをめちゃくちゃ考えてくれてますからね。

HIKIDA ミーティングのときに「明生君の独特の引っ張り(ドラムを叩くタイミング)とかは残したいんですよ」って明確に言ってましたからね。

明生 確かにやってるけど・・・それが個性なのかって気付きました。

EGACCHO バンド界隈でも類を見ないほど引っ張るからね(笑)。

猪狩 ようそれで合うなあと思って。

SHINYA よく言われるもんね。「どうやってみんなで合わせてるの?」って。

明生 それが俺なんやろうねえ(笑)。

-- SHINYAさんのクセみたいなものはあるんですか?

猪狩 SHINYAの曲作りのクセはわかりましたね。

SHINYA ウソ!?

猪狩 何でしょう、武器がひとつぐらいしかない。

全員 ははははは。

猪狩 ひとつの武器で闘い続ける侍みたい。

SHINYA 言われたら・・・そうかも。

猪狩 だから、ほんの少し手を加えるだけで大体完成しますね。「ちょっとコードを足します?」とか、その程度でした。

SHINYA その一個のエッセンスが俺にはなくて、何これ、すげえ!って。刺激的でしたね。

明生 コードの感じも斬新やし、そう行くんや!って。ドラムも出来上がって、何度も聴くと、ちゃんとわかってくれてるなと。

猪狩 ドラムは結構言いましたからね。最初は今回の音源を聴いても、歌とかリフとか目立つところばかり聴いてたけど、今は一個一個の楽器を聴いてるんですけど、ドラムの流れはいいですね。

明生 俺は思った以上にループ系が好きやなと思った。

HIKIDA 曲作り中にリズムのディスカッションはすごくしましたからね。

猪狩 キックの位置とかね。俺はドラムから楽器を始めたので、気になっちゃうんですよ。ツインペダルもいきなりお願いしましたからね(笑)。

明生 今回のレコーディングで伸ばされた感はすごくありますね。ひとつのリズムを繰り返すパターンも多くて、グルーヴ感とか改めて気づかされることもありました。俺、課題を与えられてるなって。

猪狩 ひっきーさんと同じMじゃないですか?

明生 ドラムはMやね。

HIKIDA ははははは。

-- 猪狩君は各楽器に対して、いろいろ助言したんですか?

猪狩 ギターとドラムは一番多かったんですけど、ベースは内容というより、弾き方について言いました。

HIKIDA ギターのミュートはもっと締めてほしいと言われたり、それは勉強になりましたね。

猪狩 ほんまそう。どのギターもその人が弾いたら、その人の音になるから。

-- ひっきーさんのギターの印象というと?

猪狩 リフがすごく耳に残るんですよね。同じようなリフをしつこく弾いてくるんですよ。俺はそれが好きなんですよね。ちょっとずつ形を変えて、またそのフレーズ!って(笑)。

HIKIDA ははははは。

猪狩 今回はリフの曲が多いですからね。

HIKIDA コピーして欲しいですね。

猪狩 ライヴは大変でしょうけどね。

EGACCHO 「LINDAMAN」をライヴでやり始めたけど、もう腱鞘炎になりかけてるからね。

全員 はははははは。

HIKIDA 今作の曲を練習していると、成長してる!と思うから。

猪狩 「LINDAMAN」は右手がダルいでしょうね。右手が取れそうになる(笑)。

HIKIDA 最初のミーティングのときに「ひっきーさんには訳わからない音を出してほしい」と言われたんですよ。一般的にいい音じゃなく、バーン!と聴こえたときにひっきーの音だって、わかるものがいいと。まあ、訳わからないギターの音になってますけどね(笑)。

猪狩 なってる。

HIKIDA 猪狩も作りながら、「これでええんかな?」と言ってましたからね(笑)。

猪狩 いままで聴いたことがない音にしたくて。でもいままで聴いたことがない音だから・・・意味がわからなくなって。

-- それはジャッジが難しそうですね。

猪狩 だけど、聴いてみたら、悔しいくらいかっこいい音になってますからね。

HIKIDA マスタリングが上がったときに、「これが成立しているのやばくないですか!」と猪狩は言ってましたからね。

猪狩 ひとつ一つの音は訳わからんことしているのに、キター!となりましたからね。俺、自分のアルバムよりキタ感がありましたからね。えっ、何でこんなにいい音が鳴ってるん!って。

全員 ははははは。

猪狩 ギターの音色とかザカザカ言ってますからね。

-- 「LINDAMAN」とか特にそうですよね。

猪狩 だから、早く聴いてほしい。今回合宿したんですけど、俺とひっきーさんが制作している間にちゃんとご飯作ってくれるんですよ。しかもめちゃくちゃおいしいんですよ! SHIMAってメンバー同士でご飯を食べに行っても、誰かが食べ終わるまで待っていたり・・・そういう風にメンバーを大切にしてるところも好きやし、そこが入り込めるところですね。

EGACCHO 自然にやってるだけなんですけどね。

猪狩 SHIMAにもピリピリした部分はあるけど、一番下に温かいところを持ってますからね。

-- ちなみに今回ヴォーカルについては何か言ったんですか?

猪狩 言いました。けど、そんなに言ってないですよね?

EGACCHO そうだね。

猪狩 EGACCHOさんは基本的に歌うまいから。一番言ったのはコーラスですね。ここは二声にしましょうとか。

HIKIDA 一番覚えているのは「MUSIC」の最初のシャウトは「お母さんが惨殺されたみたいな声で」って。

全員 ははははは。

EGACCHO 超悲惨なことを想像してくださいって。そういう風に気持ちを乗せるのもうまいんですよ。不思議なもので、そう言われるとそういうニュアンスがちゃんと出るんですよね。

-- 猪狩君から見て、SHIMAというバンド全体についてはどんな印象を持ってます?

猪狩 とにかくやる気がある。ゴールが見えなくてもゴールまで突っ走れる本気度を持ってるんですよね。今ってゴールがないと走れない奴が多いから。成功やお金どうこう関係なく、熱いってことですね。そこが好きですね。

HIKIDA 猪狩に曲を聴かせるのも楽しかったなあ。で、「怖い!怖い!」と言われてましたからね。

-- 怖い、ですか?

HIKIDA 不安になるみたいですよ(笑)。

猪狩 A、Bといい感じで流れるのに、Cの展開で全然意味がわからなくて。なんでいい流れだったのに、ここで迷子になるんやろって。まっすぐの道が5キロぐらい伸びてるのに、そこで迷子になってる奴みたいな(笑)。

HIKIDA ははははは。

猪狩 そこに道あるやん!って。だから、「こっちの方が良くないですか?」って光を照らすと、「ああーっ!」って叫ぶんですよ。そのリアクションが怖いんです。

HIKIDA ははははは。最初、福岡のスタジオに猪狩が来てくれたときにメンバーとここで「着地させませんか?」という会話をしてて、猪狩が「その着地って何ですか?」と言ってきたんですよ。「えっ、わからない?」って。

猪狩 わかるわけないじゃないですか(笑)。

HIKIDA でも猪狩も後半は「そこは着地させましょう!」と言ってましたからね。

猪狩 「こうすれば着地するんじゃないですか?」って。

全員 ははははは。

-- SHIMAルールがわかってきたと。

HIKIDA 「LINDAMAN」は最初シリアスなサビを付けていたけど、「なぜそこでマイナーになるんですか?」と猪狩に言われて。「そこ、LINDAMANで良くないですか」って。その発想はHEY-SMITHでは出ないと思うから、SHIMAに寄り添ってくれてるんだなと。

猪狩 途中からSHIMAの好きなテイストがわかりましたからね。

HIKIDA 背伸びして難しいフレーズを付けると、「ひっきーさんはこの感じの方がいいと思いますよ」って、ちゃんとSHIMAモードでアドバイスしてくれましたからね。

-- しかし、この「LINDAMAN」という言葉はどこから出てきたんですか?

猪狩 SHIMAと一緒にいるうちに頭がおかしくなって(笑)。SHIMAが好きそうなフレーズを言ってみようかなって。

EGACCHO 結果的にいい感じで着地しました。

猪狩 ははははは。俺もSHIMAにチャンネルが合ってきて、歌詞もここだけ少し変えたいと相談されたときも10、20秒ぐらい考えて言ったものが、大体ハマりましたからね。もうね、SHIMAは何を言ってもヘコたれないし、テンション上げてやってくれるんですよ。それはHEY-SMITHのときとも違うし、Dizzy Sunfistをプロデュースしたときとも違いましたね。俺がSHIMAの立場だったら、無理や!と思う瞬間がいっぱいありましたもん。SHIMAはそうならなくて、ひたすら練習して、ひたすらそれに向き合うから、それは凄いなと。

HIKIDA 猪狩とは毎晩お酒を飲んだけど、オンとオフの切り替えがうまいんですよね。

明生 ああ、そうやったね。

猪狩 めちゃくちゃ飲んだしね。

HIKIDA バカみたいに飲みましたからね。

EGACCHO 何本の角瓶を空けたことか。

明生 俺、何曲かは二日酔いで叩いてますからね。

-- マジですか(笑)。

猪狩 自分がそういうやり方なんですよ。夜のお酒のために頑張るぜ!って。

HIKIDA 俺も朝起きた瞬間に、夜飲むために頑張ろう!って。

猪狩 早いっすね! 朝起きた瞬間ですか? それはない(笑)。

-- 一緒に制作する中で何かエピソードはあります?

HIKIDA 「BE MY FRIEND」は猪狩からそういう曲を作りませんか?と言われたんですよ。

猪狩 あの曲は簡単でしたね。制作しているときにテーマがあると作りやすいと言ってたんで、「友達になってよ」みたいな曲はどうですか?と提案したんですよ。スタジオで2、3周ぐらいやってできましたからね。あと、俺は「MUSIC」が好きですね。最初はめっちゃハードやけど、突然サビで世界が一変するし、サビ前の何やったっけ?

EGACCHO 「カルテットの誕生だ」(「MUSIC」の歌詞)ね。

猪狩 それとかほんまに頭おかしいんちゃうかなと思ったし、次の「パッションの竜巻だ」の歌詞も付いていかれへんと思ったけど、聴いたらいい感じなんですよね。

全員 ははははは。

猪狩 この曲は共同で作って、両方のいいところが出たんちゃうかな。今回のマスタリングはHowieさん(PANTERA、SLAYER、RANCID、NIRVANAなどのエンジニア)がやってくれたんですけど、自分が好きなバンドばかり手がけている人で、音を聴いたときは嫉妬の嵐でしたからね。今は逆に俺がSHIMAを追いかけてる状態ですからね。

全員 ははははは。

猪狩 俺、次のマスタリングはHowieさんを使うんちゃうかなって。まだわからないですけどね。

EGACCHO 猪狩から一流の音に触れてほしいと言われて、それにも刺激を受けましたからね。

猪狩 世界一の音に触れたら、違いがわかりますからね。今回のマスタリングを聴いたときに、ギブソンの59年ものとか2千万ぐらいするレスポールを聴いたような感覚でしたからね。今回のマスタリングは想像の上を行きました。

-- では、最後になりますけど、今後のSHIMAに臨むことはあります?

猪狩 いやいや、全然ないですよ。僕の役目は終了しました。

全員 ははははは。

猪狩 このアルバムのツアーが楽しくなったらいいなと。

HIKIDA 11年目にしてワクワクしてます。スタジオで新曲を合わせたときも、バンド組み立てみたいな感じですからね。普通に「かっこいいー!」とか言ってるから。

猪狩 やばっ!(笑)。「LINDAMAN」とかライヴでどんな反応なんですか?

EGACCHO 最初に小倉FUSEでやったときもめっちゃ反応良かった。

明生 いきなりガツン!と来たもんね。

猪狩 マジっすか!

EGACCHO 最初の「リンダマン リンダマン〜♪」のところでリフトが発生して(笑)。

明生 猪狩が言った通りや!って。

猪狩 リフトが発生して、次の「リンダマン リンダマン〜♪」でみんながガーッ!とアホみたいに転がりますよって言ってましたからね(笑)。

HIKIDA ライヴでプレイしても、マジでかっこいいと思ってますからね。

-- その気持ちがまたお客さんにも伝わるんでしょうね。

EGACCHO 昔から観ているお客さんもめっちゃ良かった!と言ってくれてますからね。そう来るんかなと思ったら、本当にそう来てくれたから、めっちゃテンション上がったと。いままではただお客さんの予想を裏切り続けることだけがかっこいいと思ってましたからね。

HIKIDA すぐに曲を変化させちゃうんですよね。猪狩は「同じフレーズの繰り返しでいいじゃないですか」と言ってくれたから。僕はすぐに変拍子とか、いらんことをするんですよ。

猪狩 それで結果的に怖い怖いってなるんですよ(笑)。

HIKIDA ほんとに今回の曲たちをプレイするのが楽しみで仕方がないですね。

SHINYA 新しいエッセンスも曲に入ってるから、ライヴのリアクションもまた違うと思うので、ツアーは楽しみですね。

EGACCHO 熱量はさらにガツン!と上がると思います。

Interview by 荒金良介
Photo by Akira”TERU“Sugihara

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